【アンケート調査レポート】世代間の会話のズレは「話題」や「価値観」だけが原因ではなかった! ベテラン社員が若手社員との会話を避けてしまう背景に“聞こえづらさ”が あることが明らかに。若手社員の約6割が「先輩や上司と話したい」と回答。 一方でベテラン社員の約5割は、聞き取りづらさから「分かったふり」をした経験あり。
世界トップクラスのシェアをもつデンマークの補聴器メーカーの日本法人GNヒアリングジャパン株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:マーティン・アームストロング)は、職場における世代間の会話実態に着目し、若手社員(20-35歳)とベテラン社員(60-75歳)を対象とした調査を実施しました。
本調査の結果、若手社員の約6割が「先輩と上司と話したい」と前向きな気持ちを持っているにもかかわらず、実際には会話のズレが生じていることが判明しました。その背景には、価値観の違いといった精神的理由だけでなく、会話のテンポや聞き取りづらさといった“物理的な理由”によって、会話そのものを無意識に避けてしまったり、聞き返さずに「わかったふり」をしてしまったりする実態があることが明らかになりました。
本調査結果を踏まえ、上智大学の荒井 隆行先生より、世代間コミュニケーションにおける「きこえ」の影響や、円滑な対話を生むためのヒントについての解説を公開します。
調査サマリー
- Topics①:若手社員の約6割が「ベテラン社員と話したい」と回答
- Topics②:若手は「テンポ」、ベテランは「声量」。判明した“物理的なすれ違い”
- Topics③:聞き取れなかったベテラン社員の約54%が、聞き返さず「分かったふり」をした経験あり
- Topics④:きこえの改善で「より職場の人とコミュニケーションが取れる」と3割以上が期待。70歳までの就業確保措置が進む中、円滑な対話がカギに
Topics①:若手社員の約6割が「ベテラン社員と話したい」と回答
若手社員に対し、職場の60歳以降の上司・先輩との会話はどのような意向か聞いたところ、『仕事の進め方・考え方』に関して、「もっと話したい(20.7%)」「機会があれば話したい(38%)」と58.7%がベテラン社員との会話に前向きであることがわかりました。また、『これまでの経験・失敗談』についても計56.7%が話したいと回答しており、若手社員はベテラン社員のこれまでの経験やスキルについて、もっと話してみたいという気持ちが浮かび上がってきました。


Topics②:若手は「テンポ」、ベテランは「声量」。判明した“物理的なすれ違い”
若手社員が上司・先輩と話す際に感じる「きこえ」に関する理由を調査したところ、1位は「会話のテンポが合わない(15%)」、次いで「はっきりとした話し方にしたほうがいいと思う時がある(13.7%)」、「聞き返されることがある(13%)」という結果になりました。
一方、ベテラン社員に対し、若手社員と話す際に「きこえ」に関して気になる点を聞いたところ、「声が小さくて聞き取りにくい」が26.3%で最も多く、次いで「会話のテンポが速い(10%)」、「話すスピードが速い(9.3%)」が挙げられました。 このことから、会話のズレは話題や価値観といった精神的なものだけでなく、互いの声の大きさや会話スピードといった物理的な要因も、スムーズなコミュニケーションを阻害している大きな要因であることが明らかになりました。


Topics③:聞き取れなかったベテラン社員の約54%が、聞き返さず「分かったふり」をした経験あり
若手社員との会話で、相手の言葉がうまく聞き取れなかった経験があるベテラン社員(「よくある」「時々ある」「ほとんどない」の合計93.3%)に対し、その際に聞き返さずに「分かったふり」をした経験があるかを聞いたところ、53.7%が「経験がある(よくある・時々あるの合計)」と回答しました。「分かったふり」をしてしまった理由としては、「会話の内容から、何となく分かった気がしたから(45.9%)」が最も多く、次いで「聞き返すのは相手に申し訳ないと感じたから(29.8%)」が挙げられました。相手への配慮や、会話の流れを止めたくないという心理から、曖昧なまま会話を進めてしまっている実態が見て取れます。



Topics④:きこえの改善で「より職場の人とコミュニケーションが取れる」と3割以上が期待。70歳までの就業確保措置が進む中、円滑な対話がカギに
ベテラン社員に対し、もし若者との会話が聞き取りやすくなった場合に期待することを聞いたところ、「より職場の人に声をかけてコミュニケーションを取れる(35.7%)」「職場での関係が良くなる(33.3%)」、「若い考え方に触れられる(30%)」という結果になりました。 また、「仕事や日常が楽しくなる」と回答した人も22%おり、きこえの改善が単なる機能的な回復にとどまらず、職場での交流促進や、働く意欲・楽しさの向上につながることが期待されています。

こうした背景には、シニア層が長く働き続ける社会の到来があります。厚生労働省が発表した「令和7年高年齢者雇用状況等報告」によると、70歳までの就業確保措置を実施している企業は34.8%(対前年差2.9ポイント増)に達しており、少子高齢化が進む中、年齢にかかわらず意欲ある人が働き続けられるよう、企業による環境整備が着実に進んでいることが分かります。
一方で、「生涯現役社会」の実現には、単に制度として就業機会を用意するだけでなく、日々の業務において円滑なコミュニケーションを維持できる環境づくりも非常に重要であると言えるでしょう。
会話は働く上での最も基本的なコミュニケーション手段です。そのため、「きこえ」を改善しコミュニケーションの質を高めることは、ベテラン社員が培ってきた経験やノウハウを十分に発揮し、いきいきと働き続けるための“前提条件”ともいえる重要な要素だと考えます。
また、世代を超えて互いの声が届き、多様な視点が交わされる環境が整えば、ベテランの知見をビジネスに活かし、それを若い世代が受け継ぎ発展させていく好循環が生まれることも期待されます。
高年齢者の就業確保措置の広がりとともに「生涯現役社会」へ向かう今こそ、世代を超えた連携を支える「きこえ」のケアが、企業の持続的な成長にとって一層重要になってくると言えるでしょう。
<調査概要> ・年代/調査⼈数 ベテラン社員:きこえに不安を感じている60-75歳 男⼥ 300名 若者社員:20-35歳 男⼥ 300名 ・調査期間:2026年1⽉19⽇(⽉)〜1⽉20⽇(⽕) ・調査⽅法:インターネット調査 |
荒井 隆行先生による解説
年を取ることによって聞こえが悪くなる原因には様々なものがあり、複数の原因が重なることもあります。典型的な加齢性の難聴の場合、その主な症状として高い周波数が徐々に聞こえなくなります。私たちは様々な音に囲まれて生活していますが、家電が警告音として出すようなピーピーといった高い音が聞こえづらくなったりします。聞こえづらくなるのは音声も同じです。もともと人間の音声は、低い音から高い音まで時間とともに変化しながら作られていて、その中に含まれる子音や母音の情報が周波数や時間の表現の中にちりばめられているため、その一部が仮に聞こえなかったとしてもその失われた情報を補いながら私たちは言葉を理解することが可能です。しかし、高い音が常に聞こえづらい状況では、「7時(しちじ)」と「1時(いちじ)」を聞き誤ったりします。この例では、「し」の冒頭が高い周波数の成分を多く含んだ子音であり、それが聞き取れなかったことで「い」として聞こえてしまったことに起因します。
また、静かな環境でゆっくりと話された場合は問題なく音声コミュニケーションが行えたとしても、バックで音楽がながれていたり、話し声が飛び交うレストランなど周囲がうるさい環境でさらに速いテンポでの音声による会話となると、年齢が高くなるにつれてその聞き取りが難しくなることもしばしばあります。
今回、ビジネスシーンにおける世代を超えたコミュニケーションの実態が調査により明らかになりました。お互いがもっと円滑なコミュニケーションを望んでいる一方、それがうまくかみ合っていない様子も垣間見られます。まずお互いの状況を理解し、例えば若手社員であれば話す際に発声を意識して、ゆっくり、大きな声ではっきりと話すように心がけることが大事でしょう。その際、口の動きを相手に見せることも有効です。一方、ベテラン社員のサイドにおいても複数のアプローチが可能です。まず、話を聞く際にもし相手の顔を見ることが出来れば口元を見ながら聞くことがあげられます。また、話す場所も背景で何らかの音があまり存在しない比較的静かなところを選ぶことも重要です。そして、補聴器をつけてみることも一案です。いずれにしても、コミュニケーションは人間のあらゆる活動を支える重要な役割を果たしています。お互いをリスペクトすることで、「声」やその「きこえ」にも少しでも配慮が行き届く社会になればと願っています。
荒井 隆行先生 プロフィール

上智大学理工学部 教授 荒井 隆行(アライ タカユキ)
音声コミュニケーションに関わる一連の事象は「ことばの鎖(Speech Chain)」と呼ばれ、音声科学・聴覚科学における基本的な概念となっており、その音声コミュニケーションに関して音声科学・聴覚科学、音響学、音響音声学などに関わる科学的側面とその応用に主な焦点を当てて研究を続けてきている。そして、音に関わるあらゆる側面にも研究の範囲を拡大している
